工房に付き合いのある同業者にきてもらい意見交換と技術の確認をしました。
グランドピアノを前にして調律の音作りに対してそれぞれの見解をとことん話し合いました。
音色を作る方法は様々にあるのですが一般的には調律以外の方法であるハンマーに針を刺したり硬化剤を塗ったりと言った物理的な変化が主に考えられる。
しかしながら物理的な変化を加えずとも調律師が変わっただけで音が変化すると言うのはよくある事。
なぜそれが起きるのかこれを突き詰める事はあまりなくそういった研修会なども聞いた事がなくこれまで教えられた事もない。
実は現場ではそれがかなり大きなウエイトをしめていて弾き手に及ぼす影響は大きいにも関わらず話題にならない。
調律のみで音色が変化する事に対して考えられる要因としてはユニゾンと呼ばれる同音を合わせる弦と弦の微妙なずらしかたが語られる事が多い。
しかしそれだけで音色の違いを説明する事に対しては長年疑問を持っていた。なぜなら調律しとしてある程度の年数を経ているものならユニゾンをぴたりと合わせる事は難しい事ではなくみなそこを目指してまずは調律している。その結果として出てきた音色がなぜここまで違いが出るのか、ユニゾンの違いだけではないのではないかと思ってきた。
端的に言うとたった一本の弦のチューニングピンを回すだけでも音色は変化するのではないかと思っていて、それがチューニングハンマーの材質が変わる事で音色が変化する事で体感はしていたものの実感がいまいちなかったのです。
タイプの違う調律師3人それぞれユニゾンを合わせて1本の弦がどう変化したか聴きくらべをしたのですが、3人とも明らかに違う倍音が出ているのを確認できました。
一本では微妙な違いかもしれないですが、それがピアノ全体となると共鳴によって響きの大きな違いとなって現れる。
ユニゾンが合っているはずなのに音色の違いが出るのはこれだと改めて確信となりました。
考えてみればピアニストだってその人それぞれの音を持っているわけで、同じピアノでも弾き手によって出てくる音が違うのはタッチや奏法が及ぼす影響はもちろんのこと、加えてその人の音があるのは触れている身体の響きも関係しているのを思うと調律も同じ事がいえるんだと思う。
調律の場合は奏法の違いのところはチューニングハンマーの回し方や打鍵のしかたになる。
具体的にはどれだけ上げ幅を取るのかとか、有効弦長以外のところの響きのコントロールも関係してくる。