"楽器が音楽を覚えている"
先日お伺いしたお宅で聞く事ができた言葉
ヴァイオリンを演奏する時にそう感じる事があるとの事で、ピアノでもそのように感じる事があるのでその言葉に共感しました。演奏をし出すと勝手に指が運ばれていくと言うかピアノが歌い出すと言うか、そんな感覚。
50年は経っている初期のディアパソンピアノだったのですが調律後の音色にそう感じていただけたようです。
楽器と言うのは不思議なもので、鳴らせば鳴らすほど様々な音色を奏でるようになると感じます。
まさに生きていると言えるわけで、、
それだけでは調律師として抽象的過ぎるので分析をしてみると、演奏をして様々な音を出す事により楽器の各部の木が振動する事によりその振動を木が覚えると言うか、その振動数により振動しやすくなると言う事なんだと感じます。
なのでそのピアノがより多くの演奏に触れる事により音色の幅やどのような音色が出やすくなるか決まると思われます。
多くの演奏家に弾かれたピアノならばその木の振動はより多くなるだろうし、もっと言えば様々な音色を出せる弾き手に弾かれたら多彩な音色が出る楽器となる。
そしてそれはいかに調律やメンテナンスをするかによっても変わりそれが大きく影響を及ぼすと思います。
様々に多彩な音色が出るタッチと音作り。
ヨーロッパやアメリカのピアノには元々楽器にそのような要素があると思います。
でも国産であってもそのメンテナンスや弾かれかたによって充分鳴ってくる。
人間と一緒で元々の才能や素質はその人生には影響を及ぼすけれど、その後の努力によってもより良いものになる。
ダメな人間なんてひとりもいないと言う言葉のとおり可能性は無限大だと、楽器にもそれは言えると日々の楽器とのコミュニケーションを通して感じます。
新しい楽器であればこれからどのように鳴らしていくかと言う楽しみがあるだろうし、なによりピアノの場合は内部のアクションの反応が重要であり演奏家は機敏で繊細に反応するタッチにより表現がしやくなる。
卓越した演奏家であればあるほどタッチの微妙な感覚に敏感です。
いずれにしても内部のメンテナンスがしっかりしてこその話ではありますが、楽器が音楽を覚えている、それを感じとれるようにピアノとコミュニケーションが取れると弾く喜びの次元が上がると思います。