2022年12月2日金曜日

YAMAHA G1 タッチウエイト調整

YAMAHA G1 タッチウエイト調整


作業前の状態

演奏時に指に伝わる全体的な鍵盤の重さ
ピアニシモのコントロールが難しく特に連打がしにくい



各部測定
















ダウンウエイト(DW)は低音が56〜68
アップウエイト(UW)は22〜28

ダウンウエイト中音は60前後
アップウエイトは30前後

ダウンウエイト高音部55〜58
アップウエイト30前後

結果バランスウエイト(BW)は42〜47程と全体的に高め、このサイズのピアノにしては(後述)ダウンウエイト重めの傾向





ハンマーストライクウエイト(HSW)

低音から中音にかけてはスマートチャート5から9に入る標準値

次高音から上は全体で見ると重めの傾向
一般的なヤマハグランドピアノのハンマーとしては重くはなく標準。






鍵盤のフロントウエイトはシーリング値前後

 





フリクションは中音を中心に高めの傾向なので処理。センターピンにファルカス?か何か塗布してあるため経年変化によりフリクションが高めの要因に

バランスウエイト高めでダウンウエイトが大きい事からもアクションのバランスとしては鍵盤奥側が重めの傾向。

HSWは標準ながらハンマーの戻るスピードは遅い傾向。鍵盤前側の重みと奥側の重みとのバランスが関係していると思われる。

1型は鍵盤が短いぶん奥側にかかる重さが打鍵時には他のモデルよりバランスウエイト内での抵抗値が高く(フリクションとは異なる抵抗)戻ってくる時はアクションの重みが乗りきらずにハンマースピードは遅め。

大きいピアノほど鍵盤の慣性モーメント大きいのでタッチが重いと一般的には語られていますが、フルコンサートピアノで重いと感じた事はなく弾きやすいのが体感としてあります。

むしろ小さなピアノのほうが重い傾向。
厳密に言うと鍵盤の動きが鈍いと言う感じ。

ピアノの大きさが変わっても鍵盤先端からバランスピン、バランスピンからサポートの距離は概ね2対1の比率で変わらないものの長い鍵盤のほうが円運動の半径が大きく角度はなだらか。
よって鍵盤の高さと深さであるならしとあがきを大きくしても鍵盤がアクションを押し上げる高さは変化が少ない。

短い鍵盤であれば円運動の角度が急となるためならしやあがきを高くする事ができない。
これは鍵盤の奥側を弾いた時のタッチ、表現力の差が出てくる事と手前でのタッチにも深さの違いによる打鍵の余裕が出てくる。

加えて大きなピアノでは鍵盤木部そのものの質量による慣性モーメントがあるので鍵盤鉛の量が抑えられかつ長さの余裕があるため鉛埋め込み箇所の自由度が高く、バランスピン寄りに配置も容易。

バランスピンを支点とした前側と奥側それぞれの鍵盤の重心の位置により鍵盤を押す時の力及び打鍵後にアクションが鍵盤を押し戻す力が変わってくる。


鍵盤の長いピアノではバランスピンからアクションへの距離があるぶん打鍵後の鍵盤奥側にかかる重さが増して鍵盤の戻るスピードが早くなる。

ハンマーも大きなものを使っているため重力により戻るスピードも早くかかる質量も大きい。

実際にBW付近でのハンマーのスピードを測ってみるとフルコンサートのが1型より戻りが良い。

ちなみにシュワンダーアクション時代のヤマハグランドはアクションが重いのでハンマーの戻るスピード、鍵盤の戻る速さは更に早い。
ハンマーは軽めなのですがそれ以外のウィペン関係のアクションは現代のダブルスプリングのものより重い事を確認。

この場合鍵盤の前側に鉛をつめてダウンウエイトを小さくするのが通常ですが、鉛の量は少なく設定されています。

従ってハンマーの戻るスピードがとても速く、軽快なタッチに感じます。
シュワンダー式アクションが軽快に感じるのはこのせいかもしれない。

ハンマーが重い場合はレシオの関係で鍵盤の前側に増幅される重量は影響が大きいのですが、ウィペン関係のアクションの場合はハンマーよりも影響が小さい。

なのでこの設定の鍵盤で打鍵しても指に伝わる重さはあまり感じない。通常のダウンウエイトの基準でいくと考えられない事。
ただし重いハンマーを使うととたんに影響が大きくなるように考察される。







以上の事を考慮しながら平衡等式のシュミレーションを実施。

HSWを木部の削り出し及びハンマー根本から真ん中ほどにかけてファイリング、これで0.3gほど下げる。






次にストライクレシオ(SR)をウィペンへの厚紙挿入により0.4下げる。




鍵盤鉛調整によりバランスウエイトを5〜6ほど上げる。
フロントウエイトは小さくなり鍵盤の慣性モーメントが下がり戻りやすくなる。








バランスピンからサポートの距離が短いために大きな力が必要になるため鉛の鍵盤を押し下げる力が必要になるところを減らして鍵盤の戻りを優先。

フロントウエイトを軽くしても打鍵時に重みがかからない程度に調整。と言っても限界はあるのですが、それ以上に慣性モーメントが演奏時に与える影響のほうが悪影響と判断。

本来ならアクションが小さくなればハンマーを小さくしていかなければならない。フルコンサートになるほどハンマーが大きく立派になるわけですから、逆は小さくしていかなければ相応のタッチ感にならないはず。

しかし現状は1であろうが5であろうが同じ大きさ、重量のハンマーを使っているとみられる。

鍵盤長がもたらすタッチ感への問題は例えDW、UW、BW、HSW、FWなどが基準値になっていたとしても弾き心地へ大きな影響を及ぼすと考えられます。

KAWAIのSKシリーズが鍵盤長を長くしたのはよりフルコンサートへ近付けたいとの思惑であり、その影響が大きい事を理解している設計と言える。
鍵盤長を長くしたと言う事はアクションが必然的に奥へ行く事になり打弦点が変わってくる。その問題をどう解決しているのかと言う疑問は残りますが…

鉛の量を調整するためにバランスウエイトの中でのハンマーの戻るスピードを計測し一様になるように調整。
今回はフロントウエイトが軽くなり過ぎないように外側(鍵盤手前)の鉛は残しそれ以外を減量。

鍵盤鉛による慣性モーメントの影響が軽減され反応が良好に改善。







以下参考までに鍵盤の長さ及びハンマーの大きさ比較画像

左からG1 G2 C3 CF



中座板の高さ

手前からG1 G2 CF



鍵盤鉛の状態

手前からG1 G2 CF



ハンマー 
左からG1 G2 CF





シュワンダー式(シングルスプリング)アクション及びハンマー重量





参考文献