2020年2月12日水曜日

音を飛ばす

調律行った先で声楽のお話になり、ホールのすみまで届く声というのは声量があるからだけではない、声量とイコールではないと言う事に最近気付いたとの事。



これはまさにピアノにも当てはまる事であるのですが、その共通する音を遠くまで運ぶものの正体、それが倍音と呼ばれるもの。



倍音とはひとつの音に対して整数倍の振動数の音が出ている事を指すのですが、それが多く出ていれば音の厚みと言うかエネルギーが大きいと言うのか、音の伝播がよりしやすいと考えられます。





ではなぜ声量や鍵盤を強く叩く事に対して倍音の量はイコールとならないのか。

それを説明するのにわかりやすい例がないか考えていたのですが、、ふと煮物の入った鍋を見て思いたちました。



冷めた煮物を温めようとした時に急激に強火にかけると全体が温まる前に底のほうが焦げてしまう。それに対して弱火で時間をかけて煮込むと焦げるより前に全体に熱が行き渡るイメージがある。

音の伝播もそれに似ている。



急激に与えたエネルギーはそこだけにとどまる事になり、ゆっくりと時間をかけたものは全体に行き渡る。



ピアノに戻ると、打鍵した時にどのようなエネルギーを鍵盤に加えるか、それは鍵盤を通じてジャックがローラーを押し上げる時のエネルギーに変換される。そこへのエネルギーが性急なのか緩やかなのか、言い換えれば点なのか線なのか面なのか、非常に細かい話になるのですがそういった事がピアノの内部で行われている。



声楽で言えば喉だけを振動させるのか、身体全体を振動させているかどうかそういった違いなのかもしれない。また喉にかかるエネルギーのかけかたが倍音に影響するのかもしれない。



音が上がってこなく下がってしまうのはとにかく強く叩けば鳴ると言う単純な考えによるものが原因ですが、それは自分の音を自分から離れたところでは聴けないと言う事実がよりその理解を困難にしている、なかなか気付けない要因であって、やはりここでも自分を俯瞰してみる事の大切さを思うのです。



そんな事を改めて考えさせてもらえ有意義な時間を持つことができました。これらの事はより詳しく解明したく、また研究材料として数値化などもしながらまとめたいと思っています。