2014年1月8日水曜日

電子ピアノについて

電子ピアノについての私の考えを記しておきたいと思います。

電子ピアノとはその名のとおり電気的な音をスピーカーから出す電子楽器です。CDなどを再生するオーディオ装置のようにスピーカーを備えていて、そのスピーカーから電気的な音を出すための鍵盤がついているものと簡単に定義できます。

鍵盤を押すとその下にあるセンサーがスイッチとして反応し、録音されたデジタル音源がスピーカーより出てきます。センサーによる発音形式はブランドや年代、機種等により様々であり、日々改良されています。鍵盤を押す強さ、深さ、スピード等をセンサーが感知し音の強弱を決めています。

録音されている音は、各社アコースティックピアノの上位機種よりサンプリングされており高品質な音が調律することなく楽しめます。また音の響きを変えたり、エフェクト、リバーブなどの音色を変化させる効果を与えられたりピッチや調律法まで変えたりもでき使い方によっては便利なものとなっています。
最近の機種ではピアノ以外の音色、例えばチェンバロやパイプオルガンと言った音色も出て演奏する曲に合わせて使い分けもできます。

アコースティックピアノとの違いはアクションと呼ばれる機構や弦が中にあるかないかと言うことですが、最近のモデルでは疑似アクションが中に搭載されているものもあります。


技術の進歩によりよりアコースティックピアノに近付いてきた電子ピアノですが、どこまでいってもアコースティックピアノとは別物と言わざるを得ません。


疑似アクションの電子ピアノは実際には弦を打つことがないためタッチの違和感はどうしても感じてしまいます。重りを先端につけた棒(シャンク)がストッパーにより止められている状態です。

そして決定的なのが、その発音形態の違いにあります。

電子ピアノは基本的に打鍵の強弱により音の強弱が決定しますが、アコースティックピアノは実際にはハンマーのスピードとシャンクのしなりにより音の強弱音色に影響を与えています。

グランドのサイレントピアノにハンマーの速さを感知するセンサーが取りつけられているものがあり、電子ピアノの疑似アクションに取り付けることも可能でしょうが、無限に変化するシャンクのしなりまでは感知することは不可能です。それはアコースティックたる所以であり電子楽器には踏み込めない領域なのです。

無限に変化するシャンクのしなりの変化、およびそこに蓄えられたエネルギーにより打たれた弦からはまさに無限の音色の変化を可能にしているのです。

前述の電子ピアノのセンサーですが、各社年代や機種により様々な違いがあり(サイレントピアノ、いわゆるハイブリッドピアノのセンサーも含む)その発音検知の方法、感度も様々です。ゆえにどのように弾けば強弱がコントロールできるかはその固体によります。それらはそのピアノでは強弱が付けられても他の電子では違いがあるしなによりアコースティックピアノではまったく通用しない概念です。
また電子ピアノには同時に発音できる音数に限界があり高度な楽曲になりペダルによる音の重なりが増えてくるとカットされる音が出る可能性があります。


更に音色に影響を与える要素として重要なのはピアノの箱全体が共鳴板になっていると言う点です。(※ただし現在のピアノはこの点に注視して作られていないものが多い)

これはヴァイオリンを想定していただければわかると思うのですが、楽器と言うものは本来ボディが振動して音が出るものです。その結果がその楽器のもつ音色であるのです。

更には長所と言うか短所にもなり得る要素を電子ピアノは持っています。それはボリュームを自分でコントロールできると言うことです。

これは大きな会場でアンプに電気的に増幅し鳴らすことにおいては役にたちアコースティック以上の役目を果たすのですが、(その変わり音が大きくなればなるほど音のアラが目立ち耳にはツライ音になる)反面普段の練習において音量を小さく練習しているといざアコースティックピアノを弾こうとしたときにボリュームのコントロールに困惑することになります。深夜にもボリュームがおさえられるなど便利な点もある電子ピアノですが、環境や楽器によって変化するアコースティックピアノのボリュームをコントロールする技術に乏しくなり電子ピアノばかりで練習している奏者は表情の乏しい演奏になりがちです。(つぶが揃っているようには聞こえるが表現力がない)

これは小さな子供の奏者であれば尚更であり、早い段階から本物で練習することはタッチや音色の面からみても重要なのです。

電子ピアノでも大曲が弾けるようになったと言うことを聞くことは多々ありますが、指を動かすと言う側面からただ弾くと言う作業で見れば可能なことでしょう。しかしながらピアノを弾く本来の目的とはなにか、それを理解していないとそれでよしとなってしまうことになります。
ただただ機械的に弾くことを目指して練習するのか、音色や細かな音のニュアンスを表現することを目指して練習するのか。人間の心に響く演奏とはシンプルな少ない音でもきれいに心伝わるものがある演奏であると思います。クラシックであれば作曲者の意図や想い、その上に演奏者としての解釈や意味を音色にのせることができるかと言うこと。そういった意味でも変化の乏しい機械的な演奏は飽きがくるでしょう。

かくいう私は趣味でピアノを弾いていまして練習の際は電子ピアノを使っています。できるなら生のピアノを置きたいのですが音の問題、スペースの問題が大きいので電子ピアノを選択せざるを得ません。
(現在はアコースティックを導入済)現代ではこういったかたも多いと思います。

私が考える電子ピアノの役目は、ある程度ピアノが弾けて本物のタッチ音色を知ったうえで読譜の練習に使うのが良いと思います。曲を仕上げるのはアコースティックピアノで行えばよいのです。

紙鍵盤で練習する感覚です。それほどまったく別の楽器であるため本来ならば音を鳴らす奏法も違ってしかるべきなのです。


アコースティックにて仕組みがわかり合理的な奏法で弾けば指を痛めることはありません。無理に強く鍵盤を叩き続ければ長く弾くことは困難であり指を痛めてしまいます。余分な筋肉をつけ美しい音色を奏でることは困難となるでしょう。いわゆる押さえつけた飛ばない音色になるのです。ピアノの奏法に必要な筋肉は手指のどこを意識して弾くかによって付く筋肉も異なってきます。

危惧しているのは幼い子に電子ピアノの電気的な音に慣らしてしまいその感性が乏しくなってしまうのは音楽だけでなく様々なものの見かたに影響を与えるのではないかと思っています。


電子的な音が要求されるジャンル、楽曲では電子ピアノの役目も大きいと思います。


メーカーの販売戦略に踊らされないようアコースティックピアノと電子ピアノ、混同しないように使い分けていきたいものです。