2012年1月24日火曜日

ピアノ調律料金について

ピアノの調律料金はいくらくらいが適正なのか?


ピアノ調律料金、これについては他のサービス業同様に世間一般の基準をもとに各楽器店や会社、個人の調律師にいたるまでが個々に判断し設定しています。

日本にはピアノ調律師の協会が存在しますが、一様にいくらにしようと設定しているわけではありませんので値段設定については様々です。

しかしながらだいたいこれくらいだろうと言う幅はあります。これは数十年間あまり変化していません。

正確に言うならば大きくは変化していませんが、ひと昔まえのように横並びではなくなってきました。

全体的には安くなってきています。


これは近年インターネットの普及により値段が比べやすくなったことも要因としてあります。そして最近では調律師を比較し選べるサイトまで様々に存在しているのです。


ピアノの講師もそうですし、あらゆるサービス業においてこのような傾向になってきています。もちろんこれはインターネットの世界に限らず競争相手が存在するサービス業においては発生するものです。

私自身も飲食店を探すときに味そして値段を比較するのは言うまでもありません。


安いものはおいしくないと言うのが一昔まえのイメージでしたが、近年は大量に仕入れ作ることによりコストを下げて美味しいものが作れる時代になりました。大手チェーン店に行ってもまずくて金返せと言うようなことはなくなりました。


調律においても同様に、安いからと言って腕がよろしくないかと言うとそうでもありません。調律の値段が下がってきた最初のころどうせお客さんにはわからないから適当な仕事なんだろと思っていたのですが、調律師という人たちは根がまじめで手を抜けない技術者体質からか設定した値段以上のことをしてしまうようです。

なかにはほんとにどうしようもない業者が存在したりも未だにありますが、インターネットの普及により口コミの力が強くなりごまかしがきかなくなりました。

これは歓迎すべきことです。消費者がだまされずに済むからです。


しかしながら調律師の立場で見ればこれは由々しき問題です。

行き着く先は技術の安売りになるからです。


インターネットの調律サイトに登録するとわかるのですが、オーダーがあるのは値段が安い調律師であるという傾向があります。このことを感じてか、登録するとまもなくみな料金を下げていきます。

他社より少しでも安くしようと躍起になっています。

これは冷静に考え業界を未来を考えたときは自分たちで己の首をしめているようなものです。


ある程度しっかりとした技術を持って(上を見ればもっとありますが)それを提供しているのにも関わらず、仕事欲しさに身を切って値段を下げ続ける。これはその調律師にとっても気の毒でなりません。

楽器店や大手企業に属さず個人で調律をされているかたには向上心旺盛で技術も自分から学び、なにかしら調律と言うものに情熱を持って取り組んでいるかたが多いように感じています。

しかしながらそのような技術者はその個性がゆえに組織のなかでうまくやれなかったりして独立の道を選び自分自身で仕事を確保することになります。私もそのひとりですが、元来技術者と言うのは根が技術者であって経営や営業があまり得意ではないかたが多い。

そのような人間がいざひとりになったときに仕事の確保に苦労することとなります。

そして食べていくためにはなりふりかまってられないと言うことになり宣伝ができるものに飛びつくことになります。
そのようなニーズにうまく応えたのが調律師比較サイトなどです。


このようなサイトを通して発生した調律のオーダーはそのサイト運営者に紹介マージンを支払うことになります。ただでさえ料金の安売り競争でかわいそうなくらいの値段からさらにマージンを取られるのです。

宣伝下手な調律師はこのようにしてネットビジネスのなかに取り込まれていきます。


もちろん、このようなサイトでは値段を安く設定しようとは一言もうたっていません。それに無料で宣伝してもらえるのですから効果的でとてもよくできたビジネスです。SEO対策と言いまして、検索サイトの上位で検索されるような対策をお金かけてやってくれてもいます。このようにしっかりとビジネスとして対策のしてあるサイトはたくさんの人に見てもらえるサイトですから、うまく使えば集客に絶大な効果があるでしょう。


しかし安売り競争に終止符を打つためには調律師も自分自身で宣伝できるようにならなければなりません。ブログやホームページと言ったものはお金をかけずに誰もが作れるような時代です。調律の勉強ができてインターネットの勉強ができないわけがありません。本が読めればできる程度の簡単なものです。


技術に自信があるならばしっかりとした値段でお金をいただくべきです。

それは業界全体のためでなく自分自身のためなのです。

薄利多売で体をこわすような仕事をしていては先が続かないのです。


他方で値段が高くなっている調律師や会社も存在します。この時代は何事も2極化と言われますが、高くてもオーダーがくる、むしろそれに見合ったものを提供できるのならいくらでも出すと言うかたは存在するのです。

我々を守ってくれるのはインターネットの業者ではありません。我々自身で勉強をし業界としても価値を保っていかなければ未来はひらけません。


ただ、あるかたと物やサービスの価値や値段を話していたとき気付かされたのですが、自分の業界だけ高く保つことを願うが、他の自分とは関係ない業界に目を向けたらどう思うかと言われ返す言葉がありませんでした。

牛丼は安ければ安いほどいい。服も安くていいものがいい。そういうふうに思うのが消費者として当たり前の心理なのです。調律の業界だけが特別ではありません。安くていいものがあればそれでいいと思う消費者が多いのが事実。

しかしつい先日もそのような頭にこびりついた基準からか、調律を友人に紹介したいと申し出てくれたありがたいお客様に対して”他より安いと思いますからいいですよ”と言ってしまいました。

そのかたは”えー、そこ?”って返されたのです。

一番に値段のことが出てきてしまう、それは消費者が安ければいいのだと言う先入観に支配されているからおこったことです。しかしこの例のように必ずしもそのような人だけではありません。

東京の著名な先生宅の調律に伺ったときも、もっととればいいのにと言われました。


そのような価値をわかり対価を払っていただけるかたを大事にしていきたいと改めて思う次第なのです。


コンサートやCDもしかりで、いいものを提供されたときはしっかりと対価を払うべきです。それはめぐり巡ってやがて自分のところへ返ってきて結果的になにかしらの利益をもたらすものなのです。