2009年7月20日月曜日

子供がピアノをやめてしまう理由

子供がピアノをやめてしまう理由はなんでしょうか?

私自身はある程度大きくなってからピアノを習い出したのではっきりとその心境がわかるわけではないですが、長年ピアノを弾いてきてわかることもあります。



小さいろから習っている場合、大抵のケースでは小学校の部活動の始まる時期、もしくは中学校の受験時期に続けるのか辞めるかの選択があるようです。


小さなころ、3歳くらいから習わされるのは自覚がないためピアノを弾くことがあたりまえという心境になっています。
そのためピアノが弾けること、ピアノを弾く環境にあることがどれだけすごいことなのかわからない状況にあります。


日本人として生まれれば日本語をしゃべるのは当たり前、米国に生まれれば英語が当たり前というような状況に似ています。


しかしながらピアノが弾けない人、英語が話せない人からすればスラスラとこなせることは実はすごいことです。
ピアノや英語に限らず自分にできないことをできる人と言うのはすごいのです。



当たり前に身に付けたものにはありがたみも何も感情がないため、深く追求しようだとか面白味を感じたりすることがあまりありません。


ピアノの場合は弾く意味が見出だせない場合、飽きて嫌になるかもしれません。




ピアノを弾くことが嫌になるには様々な理由がありますが、私が自分の経験からピアノを辞めてしまう理由を考察してみた結果を記します。


これらはあまり語られることがない事例だとは思いますが、専門家の見かたとしてピアノを辞めてしまう理由のひとつとしてかなり確率の高いと思われることを述べたいと思います。



子供も大人も含めて言えることなのですが、ピアノを飽きる、面白味を見出だせないことのひとつに”ピアノという楽器”自体が原因しているということが考えられます。


音が良くない弾き難いピアノでの練習、これほど苦痛なことはありません。


音の良し悪しは訓練されていない耳ではわかりにくい要素かもしれませんが、鍵盤のタッチの良し悪しによる弾き難さはピアノレッスンにおける障害になります。

特にクラシックの練習曲のように音符の正確性を求められるようなものの場合、的確なタッチによるピアノ練習ができなければ嫌になるでしょう。

しっかりと調整されたホールのコンサートグランドで練習できれば、余分な力を入れずに弾き手の意思を反映してくれるのでピアノが上手くなったと感じることでしょう。


毎日このような状態のピアノで弾ければ理想です。



このフレーズが自分のピアノではうまくいかないのに他のピアノではスムーズに弾ける。

こんなことでは毎日の練習が嫌になるでしょう。毎日弾くピアノがどのような状態であるのか?これが重要なのです。



音に関しても同様のことが言えます。

音色が汚いピアノで毎日弾かなければならないような場合、練習していて心地よさを感じることはないでしょう。

専門家から聴けば調律や音色の調整をしっかりとしてあるピアノとそうでないピアノとでは大きな違いがあり、音色の汚いピアノでは弾きたくないと思えるほどです。


そこで耳が良くないのでそんな違いなどわからないから大丈夫と思うのは間違いです。



私自身、以前はごく普通の耳を持った人間でした。

なのでピアノの音色に差があることなど知りもしませんでした。

調律後はキレイになったことがわかりましたが普段はその変化に気付くことはありませんでした。


しかし音色の変化は認識できなくてもキレイな状態や汚い状態は明らかに存在するのです。



認識できない音色であってもそれが各個人の弾き手に対して大きな影響を及ぼしていると考えられます。

キレイ、汚いは、それが認識できる人にしてみればかなり大きな違いがあるので、認識できない人にとっても無意識にその精神状態に働きかけていると考えられます。



汚い音で弾いていれば練習が嫌になりやすいでしょう。それが音が原因だとはわからずになんとなくピアノを弾くことが嫌になるということは充分に考えられます。

音色そしてタッチ、これらがピアノを弾く楽しさを見つけられない、そして辞めてしまうひとつの原因ではないでしょうか?



子供のうちは特にそれらがクリアーになり、ピアノを弾く楽しさを発見できれば大人のかたが弾くピアノのように自発的に練習するようになるでしょう。


ピアノに限らず好きになってしまえば物事は上達が早いのです。

練習があまりに苦痛であればやがてピアノに向かなくなり先生にもお小言を言われ更にピアノから離れていきます。


最近では怒る先生が少なくなってきたのでその面でピアノを辞めるということは少なくなってきましたが、
生徒をやる気にさせることは容易ではありません。


そのやる気を無くさせること、それをピアノが原因の一端を担っているとすれば我々調律師の責任でもあります。


私が自分でピアノの調整をできるようになってからは弾きやすく、キレイな音で弾けるようになりピアノレッスンを楽しむことができています。


子供さんも早いうちにピアノを弾く楽しさを見つけさせられたら、早い段階でピアノを辞めることも少なくなるでしょう。