2012年9月9日日曜日
ピアノ運送、修理の悪質な詐欺的行為の被害について
ピアノ運送や修理を依頼する場合どのようにどこの業者に依頼しようか迷われることがあるでしょう。
私がこの業界で仕事をしている経験から現状を少し書いてみようと思います。
知り合いの業者やピアノのレッスンに行っていればお付き合いのあるピアノの先生に相談することもよいでしょう。
なにもツテやつながりのない場合、チラシや電話帳、インターネット等で調べることになると思うのですがこれらの媒体では内容はさておきとかく広告、宣伝がうまいところへ依頼してしまいがちです。
ピアノ運送¥8000~、ピアノ調律¥8000~、なんて広告をよく見かけますが相場より著しく安いものは必ずなにか裏があります。
特に長年放置していたピアノの見積りにおいては問題と思われる悪質なケースが見受けられるのです。
30年くらいまえピアノがよく売れた時代がありました。高度経済成長により暮らしが豊かになり誰しもかれしもが我が子にピアノのレッスンを受けさせる時代が到来し大手メーカーのピアノ教室を中心にピアノブームとなった時代。
街の百貨店などでもピアノを売り出し、展示即売会なども頻繁に行われていました。楽器は楽器店で買うものと言うのが今の常識になっていますが、当時はピアノメーカー以外の会社なども利益が出るピアノ作りに乗りだし、人が集まる百貨店などでピアノが当たり前のように売られていました。当時を知るかたにお聞きしたところ、楽器店などが大々的にフロアを貸切にしまるでピアノ百貨店のような様相であったようです。景気が良かったのです。
その時代に購入された世界の歴史上にも類を見ないような実にたくさんのピアノが日本には残っています。
中には使用されないまま置かれたものや、売れたピアノに対しての調律師の不足によりメンテナンスをされてこなかった楽器が家のなかに眠っていたりします。
そのようなピアノを修理して再び使おうとされるかたも近年増えてきて修理見積りを依頼されるケースが多々あります。
しかしあまりにもひどいケースに直面することがありピアノ修理に携わるものとして本当のところを書く義務を感じています。
相見積りの現場に伺うとあり得ない他社の見積り結果を見ることがあります。
他社と言いましてもこの地方で言えば1社ないし2社くらいの特定のところなのですが、内容が実に詐欺的なものなのです。
まず、営業マンがピアノ修理の見積りにくることは修理見積りの性質上あり得ません。もし調律師ではない人間が見積りにきたとしたらその時点で断りをいれたほうがよいでしょう。
ピアノの修理、ことに長年手を入れていなかったものにおいては確かなプロの目が必要になります。
どこをどう修理すればそのピアノがベストな状態となるか、それはマニュアルが通用する世界ではなく一台一台置かれていた環境、使用の具合によって異なるものです。
技術者ではないものがそれを判断することは不可能です。
よくある例としては年輩のベテラン営業マンが風貌と話ぶりでいかにも信頼おける人物であると信じ込ませるパターンです。
依頼主でピアノの中のことまでわかる人間は皆無ですから、判断する材料として人あたりの良さや話の説得力だったりします。
しかしながらそれはピアノをよくする本質とは大きく異なるものであり、詐欺的な行為と言ってもよいでしょう。
詐欺師とは悪くみえないものです。特に”プロの詐欺師”とは悪くみえないものです。
だから騙されやすいし詐欺はなくなりません。変な話、誰がみても怪しい人間は詐欺師としては優秀とは言えません。
ではそれを見分けるポイントはどこか?
まずはピアノ運送屋がピアノ修理をしているようなピアノ運送運営の修理屋は要注意です。
運送料金や調律料金を安く設定しお得感を出していますが修理のほうで利益を出す算段になっています。
仮に運送のみを依頼すると通常の値段になるはずです。
運送関係で気をつけなければならないのは、運送を依頼しただけなのに運送の見積りやピアノの引き取りの際、ピアノの修理まで案内されることが多いと言うことです。
それも専門家ではない引き取りの人間から言われたり、たとえ専門家がきて案内されたとしてもかなり割高な値段設定になっていることが多いです。
過去の例でみますと、中のアクションだけ引き取り10万ですと言ったようなことやオーバーホールと称してピアノを倉庫へ入れ30万以上の高額な修理代を請求したりと言ったようは事例も発生しています。その場合、移動の際に一度倉庫へ保管するタイミングでピアノ弦を故意に切ると言ったような見た目で修理の必要性がわかるような細工を施すあくどい行為も確認されています。
これは大手メーカーの技術者が修理を取りたいがためにあまりメンテナンスをせずに、時には故意に不具合を発生させるような行為や、営業マンが直るピアノを直らないと言って新品ピアノを売りつける行為に比例する消費者を騙す行為です。
実際にそのようにして出された見積もりは我々のピアノ修理業界の常識からはかけ離れたものが多いのが事実です。
合い見積りに行った経験談から言いますとまるでちんぷんかんぷんな説明や見積りが出されていることがあります。
私が実際にみて修理すべきと考える部分とはまったく無関係なところで見積られていて驚くばかりです。
それらの事例はピアノ技術を知らないもの、営業関係の人間がみたであろうことは明らかです。
実際にアクションを持って帰っても何もやらずに掃除くらいをして持ってくるのですからまともな見積りは必要ありません。
よくある例が、ハンマーがガタガタだからと言って横揺れすることを確かめさせ、ネジだけしめてきて持ってくるような素人がわかることをアピールするパターンです。
年数が経ちゆるくなったネジの増し締めは修理で言えばサービスくらいの意味あいであり高額な値段がつくようなものではありません。その程度のもので10万前後の請求をするのは詐欺以外のなにものでもありません。
ピアノの修理はアクションと本体が合わさり初めてできるものです。
アクションを持って帰ったとしてもできることは限られており、修理して持ってきた際本体にいれて調整をしなければなりません。
そこからの調整、調律が修理の70%を占めるような割合なので時間にして半日ないし一日は現地にて調整しなければ決してよくはならないのです。
運送関係がらみの修理屋が本体ごと自社倉庫なりに入れて修理しないのは何故だかおわかりでしょうか?
運送の手間を極力省き、アクションの出し入れだけで荒稼ぎをしたいからです。
しかし本当にピアノをよくしようと思ったら手間がかかるものなのです。
手間をかけずに通常の修理でかかる金額より高額な値段をもらっていく。このような詐欺行為が未だに行われていることは技術をしっかり提供しているものたちからは許しがたい行為です。
もちろん運送関係の業者がすべてこのような行為をしているわけでは決してなく、健全な業者も存在します。逆に名もある大手メーカーや我々個人の業者でも悪質な行為が行われている場合もあります。業界全体からみて健全な修理見積もりが出ていればどのような営業のしかたであれ問題ないのですが、明らかにおかしな修理が行われているのが実態なのです。
やはり餅は餅屋でありますからそれぞれ専門の業者に任せることが良いですしそれが本来の姿です。営業マンが技術に口を出したり、調律師がピアノ販売や営業に偏ったり、ピアノの運送が商品を売ったりピアノ修理を過度にすすめたりして目先の利益重視に傾けば本来の仕事がおろそかになり信頼を失うのは目に見えています。
早くこのような残念なことを書かないでよいような健全な状態へなって欲しいですし、一般のなにも知らない消費者が騙され被害の受けることのないよう愛知の東部~西部地方まで目を光らせ啓蒙を続けていきたいと思っています。
ピアノ運送や修理、ピアノにまつわる様々なケースについてどこのメーカー、楽器店に依頼をしたら確実なのか、問い合わせには全国において可能なかぎり情報をお伝えできればと思っています。